アニメと音楽のメモ帳

アニメと音楽についてまとまりない文章を。

22/7 10話

「22/7」の第10話から。解散する回。

粗筋

壁の指令通り解散の手はずは着々と進む。22/7の各メンバーが出演するメディアは全て降板。解散会見は行われたものの、世間には何も詳細が明かされないまま、GIPは閉鎖され、22/7は解散。メンバーたちはそれぞれ元の生活へと戻っていくのだった。

所感

前回の最後に解散するよう指令が吐き出されたことを受けて22/7が解散する回だった。実際に解散に至るまでには、メンバーはもちろん、22/7の身の回りを見てきた合田も何かしら思うところはあったようだが、「全ては壁の指令」という背景の元、会見でも紋切型の挨拶しか許されない。

思うところがあったのは視聴者にしてみても同じことだろう。「人気絶頂の主人公たちがいきなり理不尽に解散を迫られる」という、困難なことの出現は、次にそれをいかにして乗り越えるか、あるいは回避するか、という、ある種バトルものの展開を自ずと期待させる。「さよなら、私たちの世界」という副題の元、解散しろと言われたので解散しました、では前回第9話を見た人間であれば想像できる内容であり、ストーリーもドラマもあったものではないからだ。

副題と状況を利用して視聴者をうならせた話は、例えば2013年から2014年にかけて放映された「プリティーリズム・レインボーライブ」の第25話「さよなら、べる」に見ることができる。このエピソードの1つ前の話では、登場人物の1人・蓮城寺べるが仲間たちの元を去らねばならない状況が提示されており、この状況を副題と共に考えればそのままべるが仲間に別れを告げる悲劇となりそうなものである。しかし、実際にべるが別れを告げたのは過去のべる、自分の弱い部分であり、精神的に成長を遂げたべるが状況を打開する行動を取った結果、仲間との別離の回避に成功する、というドラマティックな展開となっている。

しかし、それは本作に限っては違っていた。今回の1話分をかけて行われたのは、言ってしまえば22/7解散の模様の放映に過ぎない。そこには逆転のきっかけもチャンスもありはせず、指令に抗いたいのにそれがかなわないメンバーのやるせなさもファンの怒りや悲しみも、壁の淡々とした態度が醸し出す無情さの前では意味をなさない。そしてそのままエンディングが始まる。それはまるでアイドルグループ・22/7の終わりを暗喩しているかのようで、物悲しくもある。

と、本当にここで終わってしまってはただただ後味の悪い悲劇の幕引き、となるところだが、救いとなるのはCパート、ニコルが自宅で自身の幼少期を回想するシーンだ。そこではニコルが通っていた学校、恐らく小学校にみうが転校してくる。そこで次回へと続き、次回の副題がニコルの声で告げられるのだ。これまでの個別エピソードへの流れから考えて、恐らく次回がニコルの個別エピソードであろう。

全体の流れから考えると今回は妙であった。第4話の桜から前回第9話の絢香まで連続して22/7メンバー中6人の過去が描かれ、個別エピソードが残っているメンバーはみうとニコル。順当に行けば今回はどちらかのエピソードとなるところだったが、実際はただの解散劇だった。意図的にそのように構成されたと見るべきだろう。そしてその内容が悲劇であったことを考えると、今回提示された解散してしまったという状況に対して次回で何かしらの動きがあり、そこにニコルの過去が関係してくると考えるのが自然だ。

妙なのは流れだけではなかった。壁の指令にも矛盾がある。壁は絶対的なものであるはずなのに、「一周年記念ライブ」の指令とライブの前に「解散せよ」という指令を両方吐き出している。解散してしまっては記念ライブなどできるはずもない。壁の機能に欠陥が生じたのか、それとも壁に何らかの緊急事態が起きたのか。

もっとも、壁の「奇行」についてはそもそも合理性などないと見ることもできる。即ち、壁は理不尽な権威の象徴であり、みうたちをただ振り回す存在として描かれる役割である、という考えである。そう解釈すると、次に示す作中のみうのセリフには拡大して考えられる余地がある。

ある人に言われたの。大人はやりたくないことをするものだ、って。その人の言う通りだった。大人はいつも勝手。私たちの気持ちなんか全部置き去りで。こうやって人は、色んなものに慣れていく。

今の場合、「大人」を壁、「私たち」をみうたちや作中のファン、視聴者まで含んだ表現であると捉えてみるのだ。すると同時に、上記のセリフに対してニコルが発した言葉が希望になってくる。

私はそうは思わないわ。

だってそうでしょ。失うことに鈍感になることが、大人になることじゃないはずよ。現実や壁は誰にだってある。それでも人は、どんなときも、わがままに生きていいのよ。大人は子供の上位互換。じゃないと、夢がないじゃない。

喪失に対しては諦めるという態度が潔い。「大人」になるにつれて失う物事が増えていくと、大抵はやがてそのことに慣れたつもりになってしまう。そうすることで悩みや苦しみを長引かせずに済むし、結果として次に進める、言わば処世術の一種だからだ。それは本作が今回のBパートで終わった場合の、苦しみたくない「大人」の世界である。

しかし、次回が存在し、それが、所詮大人も子供の育ったもの、と言い切り、解散会見で唯一頭を下げなかったニコルの個別エピソードである、となると話は別だ。22/7というグループは解散し、消滅した。壁の指令である以上どうしようもなかった。それは事実だ。それでも、これまでを踏まえて今後も大人しく振る舞い続けなければならない道理などない。どんな「わがまま」を見ることができるか。そこには夢はあるのか。ニコルがこれまでストイックにアイドル一筋だったからこそ、「大人」の論理など意に介さないような痛烈な一撃をかましてほしい、と思ってしまう。今回の話に救いがなかったが故に尚更その期待度は高い。頼むぞ、ニコル。